高層ビルが林立している今日、南京の一隅に、1980年代の面影を残す場所がある。それが、南湖街区だ。南京にとって、南湖はランドマーク的であり、時代の記憶の縮図でもある。
南湖街区は1980年代に建設され、庶民が暮らす賑やかな場所だった。今日、ここはレトロな街区に改造され、昔の生活ぶりがそのまま保管されており、まるで大型の青空生活博物館のようだ。街区に入ると、80年代の売店や理髪店、レトロなリビング、子供の頃よく遊んだ「石けり」、コンクリートでできた卓球台など、これらは全てあの頃の人々の記憶を蘇らせるだろう。80年代で流行っていた歌が流れる街道を歩きながら、商店の窓一面に貼られたアイドルのポスターやクラシック映画を流す古いテレビを目にすると、思わず微笑んでしまう。道端で象棋と呼ばれる中国将棋をやっている年寄りたちも活気の溢れる青春時代に戻ったようだ。交差するたくさんの路地に数え切れない程の軽食店が隠れていて、「張府園大碗面」、「胖子砂鍋」、「南湖揚串」など、日が暮れると、これらの軽食店は色とりどりの看板にランプを灯し、料理の香りに混じる人の声が、南湖の路地から溢れ出ている。ここで、歩く速度を落とし、時の流れもゆっくりなこのレトロな雰囲気の中で、南京の昔ならではのロマンチックさと温もりを味わうことが出来る。